フィレンツェ「ブォナッローティの家」、若きミケランジェロの才能に酔いしれる

ルネサンスの巨匠の1人、ミケランジェロ・ブォナッロッティ。絵画や建築でも活躍しましたが、やはり一番の才能は、フィレンツェのダヴィデ像やメデォチ家礼拝堂、ローマのモーゼ像などの彫刻ではないでしょうか?アレッツォ県北部のカプレーゼ村出身ですが、家族と共にフィレンツェに移住し、ロレンツォ豪華王の庇護の元でその才能を開かせました。そんなミケランジェロの若き作品が残るのが、ここブォナッローティの家。彼のお墓もあるサンタ・クローチェ教会の近くにありますが、さほど知られてないのか、訪れる人はまばらです。

この家はミケランジェロ自身によって購入されましたが、ここは彼の定住先ではありませんでした。1516年~1534年のサン・ロレンツォ教会で仕事をしている間は滞在していたと言われています。ミケランジェロの死後ブォナッローティ家を継ぐ甥っ子・レオナルドに引き継がれ、更に彼の息子であるミケランジェロ・イル・ジョヴァネにより、現在の基礎となる改装が30年近くの年月をかけて行われました。現在は、財団によって管理されるミュージアムとなっているのです。

1階はミケランジェロ・イル・ジョヴァネを中心としたブォナッローティ家のプライベートコレクション。門外不出のロッビアのものなど16世紀の作品があります。

ミュージアムのメインは2階。まずは階段を上がると、1500年から1800年代に描かれた、複数のミケランジェロの肖像画に出会うことができます。いずれも黒い服に同じ角度、同じ表情・・・ここからも何となく、ミケランジェロの性格がうかがえます。

そして若きミケランジェロの傑作2つがある部屋へ。この2作品は、メディチ家の当主であるロレンツォ・イル・マニーフィコの芸術アカデミーにいた頃の作品とされています。この「ケンタウロスの戦い」はロレンツォ・イル・マニーフィコに捧げられた作品とされていますが、1492年の彼の死とそれによる政況変更により、作業は止まったと言われています。いくつもの体と頭が絡み合う迫力あるこの作品は、未完成ながらも、ミケランジェロ少年期の最高傑作とされています。同時期に製作された「階段の聖母」は、ミケランジェロの甥っ子であるレオナルドからトスカーナ公のコジモ1世に贈られましたが、1616年に「偉大な祖先への賞賛」として、トスカーナ大公コジモ2世からレオナルドの息子であるミケランジェロ・イル・ジョヴァネに返却されました。それから現在までの400年間、このブォナッローティの家に保管・展示されています。

レリーフの部屋からホールを挟んで向かい側にあるのが、彫刻の粗型の部屋。1664年以前の記述が残っておらず一時期不明となっていた粗型は、19世紀半ばに再発見されたものです(一部はミケランジェロのものか不確定)。粗型は、ミケランジェロが若い頃から老いた頃まで年代は幅広く、また蝋、木、テラコッタなど、その素材や技法もさまざま。その中で最も秀逸な粗型が、1530年ごろ製作の「2人の闘士」。最終的に別の彫刻家により製作されたヴェッキオ宮殿前の「エルコレとカークス」や、ヴェッキオ宮殿の500人の間内にある「勝利の守護神」など、どの作品の粗型であるかは確定されていませんが、身体の緻密さや躍動感などミケランジェロ作品の特徴が、この小さな粗型からも十分に感じられますね。

薄暗い部屋に浮かび上がる小さな作品、それはミケランジェロが製作過程で残した素描です。「芸術家列伝」作者のヴァザーリによると、ミケランジェロは「作品製作の苦労や不完全なものを見られないように」と、大半の素描を焼いてしまったそう!しかし幸いにも、甥っ子であるレオナルドがローマの市などでそれらを見つけて買い戻し、現在はこの家に200もの素描が残りました。かつては額に入れて展示されていましたが、1960年から紙の劣化を防ぐ現在の展示方法となり、限られた点数が一定の期間で交代で展示されています。なので、時間をおいて再訪すると、また違う素描が見られるかもしれませんね。

「サン・ロレンツォの製作所」の間はメディチの菩提教会であるサン・ロレンツォ教会のためにミケランジェロが計画した、2つのモデルが残っています。1つ目は、現在は未完成で残っているサン・ロレンツォ教会の木製のファサート。メディチ家出身の教皇・レオ10世の時代にミケランジェロに計画が託されていたものの、最終的には1520年に契約書は撤回され、その2代後のメディチ家出身の教皇・クレメンテ7世によって工事は再開計画がなされるも、彼の死によって工事が再び行われることはありませんでした。もう1つは、ミケランジェロのサインが残る唯一の大型粗型「川の神」。彼の代表的作品である新聖具室のウルビーノ公のロレンツォ・ディ・メディチとヌムール公のジュリアーノ・ディ・メディチの霊廟の下に置かれるはずだったのが、4体の「川の神」、このうちの1体がこのミュージアムに残っています。結局、政況の変化などでミケランジェロがローマに去ったために実現はしなかったのですが、これが完成していたら、新聖具室はいっそう華やかになっていた事でしょうね。

その他の見所は、ミケランジェロの甥っ子の息子、ミケランジェロ・イル・ジョヴァネの計画で装飾を施した4部屋。最初の「ギャラリー」は、ミケランジェロへの賛辞として壁面に彼と法王・権力者との面会のシーンが10枚描かれ、窓側の壁面中央にはミケランジェロの肖像が飾られています。その後に続く、「夜と昼の間」「天使の間」「書斎」もギャラリーと同じく1600年代半ばまでに装飾された部屋ですが、面白いのが「書斎」。壁面上部には詩人、天文学者、人文学者、哲学者などトスカーナが輩出した偉大な人物の肖像画が描かれ、これはガリレオかな?ダンテかな?と想像しながら鑑賞するのが楽しいですよ。

こんな風に、見所たっぷりの「ブォナッローティの家」。ミケランジェロファンの方は、ダヴィデやメディチ家の礼拝堂だけれなく、ぜひここにも足を運んでみて下さい。彼の若き日のみずみずしい作品と、作品作りの最中のミケランジェロがうかがえる粗型や素描・・・有名作品からは見えない、ミケランジェロの素顔に迫るミュージアムです。

ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報

Casa Buonarroti
Via Ghibellina 70, Firenze
Tel : +39-055-241752

11月1日~2月28日は10.00-16.30
3月1日~10月31日は10:00-17:00
(閉館の30分前にチケット売り場はクローズ)
毎週火曜、1月1日、イースターの日曜、8月15日、12月25日は閉館

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