マレンマ地方のソラーノ市エリアには、この地域のエトルリア時代と中世の遺跡や要塞などをまとめた「凝灰岩の町」考古学公園があります。公園はほとんどがオープンスペースで、大きく分けて3つのエリア:ソヴァーナのネクロポリス、ソラーノの要塞とサン・ロッコ展望台、ヴィトッツァの洞窟居住区、に分かれています。各ゾーンの駐車場に車を置いたら、森の中をトレッキングしながらの見学になりますが、深い森や絶壁の中を歩くのはとても心地よく、いつしかその時代に自分もいるかのような気分になってしまいますよ。
ソヴァーナのネクロポリ
この中でも圧巻なのが、エトルリア時代のお墓や Vie Cava (凝灰岩を切り崩してできた通路)が残るソヴァーナのネクロポリ。このゾーンは有料で、まずはチケット売り場でチケットを購入します。あとは地図を見ながら、各エリアごとに見学していきましょう。
まずはこのゾーンのシンボルで一番大きな「イルデブランダの墓」。これは1924年に発見され、ソヴァーナ輩出の教皇・グレゴリオ世の本名がつけられました。3世紀のエトルリア時代のものとされるこのお墓は、地下の死者がおかれる部屋に階段が続いています。
イルデブランダの墓の左エリアには、他にも「羽の生えた悪魔の墓」や、「カラスの墓」などがあります。一方右のエリアには2本の Via Cave がありますが、特に長く続く Il Cavone は、時間や体力がない人は途中まで行って折り返しましょう。
Il Cavone は道幅も比較的広くて歩きやすいです。所々にエトルリア時代に書かれた文字?記号のようなものがありますので、お見逃しなく!同じエリアには、「台風の墓」もあります。
もう1つのエリア、サン・セヴァステイアーノへ行くには、チケット売り場からいったん駐車場のある道へ戻り、200mほど行った右側にあります。ここでの最大の見所は、やはりサン・セヴァスティア―ノの道で、絶壁の高さはなんと20m!!
ここは道幅もひときわ狭く、私たちが行った時は真ん中の溝に水がたまっており、両サイドに足を置いて注意深く進みました(次男は滑って片足足首まで水に浸かりました・涙)。奥の右にある階段を上って洞窟祈祷所からは、その絶壁を上から見下ろすことができます。ただ真下を見ようと乗り出し過ぎると危ないので、腕を伸ばして撮影、が無難です(笑)
このエリアのもう1つの見所が、「人魚の墓」。上部に人魚のモチーフが描かれていますが、エトルリア時代ではポピュラーだった怪物の1つだったスキュラ(海の怪物に姿を変えられたニンフ)が、当時は人魚のように絵が描かれることが多かったそうです。
この墓は1843年にイギリス人によって発見されましたが、亀裂などの痛みがひどく、現在こうして見られるのは2003年に終了した補強と崩れ落ちたブロックの再設置工事の賜物です。
ソラーノの「サン・ロッコ展望台」と「オルシー二要塞」
ソヴァーナからソラーノへ向かうと、ソラーノに到着する直前に左側に現れるのが、サン・ロッコ展望台の標識。ここには多くの遺跡は残っていませんが、ソラーノに隣接した凝灰岩の丘になっており、ここからソラーノの全景が見られます。
こうして見ると、まさにソラーノが凝灰岩の上に建てられた村であること、そして基盤となる凝灰岩に残る洞窟など、この地域の特徴がよく分かります。
それからソラーノの要塞へ行く場合は、ソラーノの村ではなく、Fortezza(要塞)の標識に従って、要塞南側の駐車場に停めるのが便利です(村のほうへ停めると、要塞まで坂道を上ります)。
駐車場はこの図のL側にあり、真ん中を通ってFを通り抜け、Hの広場からチケットカウンターへ。ここの一番の見所である地下ツアーの時間(通常10:30、11:30、15:30、16:30、17:30)を確認後、時間があれば中のミュージアムを見学し、見学がすぐであればカウンターのあるホールで待ちましょう。特に定員はないようで、集まった人が全員参加できます。係の人が声をかけてHの広場からガイドツアーが始まりますが、説明は地下部分だけでなく、ソラーノの中世からの歴史や要塞の全体の成り立ちなども含め、おおよそ40分。
元々の要塞は12世紀、この地を治めていたアルドブランデスキ家によって建設されました。その後、アルドブランデスキ家が治めていたこの領域が婚姻により全てオルシー二家に移ったため、要塞正門の上のオルシー二家の紋章には、アルドブランデスキの家紋も入っているそうです。要塞は14世紀のオルヴィエート、15世紀のシエナ、そして幾度もの教皇庁の攻撃にも耐え抜いた設計と頑丈さを備えたものでした。その防御や敵が入って来た時の攻撃などの説明を聞いていると、その緊迫の場面が目に浮かび・・・歴史好きには、もうたまりません!
そして一番の見所は、やはり地下道ツアー。サン・ピエートロ、サン・マルコと名付けられた2つの堡塁を結ぶ地下通路に入り、当時の様子を今も見ることができるのです。
最後のエリア・ヴィトッツァは、ソラーノから車で10分ほどの距離。ここには凝灰岩に広がる台地に住んでいた中世時代の洞窟住居、納骨所、廃墟となった教会などがあります。今回は時間切れで訪れることができませんでしたが、リベンジの際にまた追記しますね。
ソヴァーナ~ソラーノ、ソラーノ~ヴィトッツァのそれぞれの間は車で15分前後の距離ですが、このように見どころがいっぱいで結構歩いて体力も消耗するので、じっくり周れば丸1日かかります。更にソラーノ・ソヴァーナの村散策やピティリアーノも含めた凝灰岩の村全てを周るとすると、2泊3日くらいあっても良いのでは?特にエトルリア文化や要塞・城塞好きにはたまらないこのゾーン、超おススメです!!
ギャラリー(クリックすると拡大します)
基本情報
Parco Archeologico Citta’ del Tufo
【ソヴァーナのネクロポリ】
3月末~10月初は10時~19時。10月初~11月1日、11月の土日、12月8日を含む連休と12月26日~1月初旬までは10時~17時。チケット5ユーロ。
【サン・ロッコ展望台とヴィトッツァ】入場自由
【オルシー二要塞】
3月末~10月初は10時~13時&15時~19時。10月初~11月1日、11月の土日、12月8日を含む連休と12月26日~1月初旬までは10時~13時&14時~17時。チケット5ユーロ。
※ソヴァーナのネクロポリ・オルシー二要塞とソヴァーナのサン・マミリアーノ博物館の共通チケットは10ユーロ。